別居が始まった。 それは思いがけない事件でのことだった。 夫の母が警察で保護されたのだ。
夜22時を過ぎた頃、他県の警察から電話がかかってきた。 夫が対応したのだが、様子がおかしい。電話口で「はい、はい、申し訳ありません」と謝っている。 電話を切ったあと、「何かあったの?」と聞いてみると、「お母さんが外出して帰ることができず、警察に保護された。これから迎えに行ってくる」と。
その週、夫は区役所の人と面談をしたり、病院に検査に行ったりして、土曜日の夜に帰ってきた。 帰宅した夫は夕食を食べた。食べながら少し話をして義母の様子を聞いたりしたが、夫は私の顔を見ようともしなかった。 当分、義母の家に行き、生活に不安のないよう支援が整うまでそちらで暮らすと言う。いつ戻ってくるかと聞くと「わからない」と。
翌日の日曜日は朝から外へ勉強しに出かけ、夜まで帰らなかった。 月曜日も同じように夜まで帰ってこなかった。 私はこのまま喧嘩をした状態で離れて暮らすのは良くないと思い、月曜の夜、夫が帰ってきてから話し合いを持ちかけた。
夫が怒っている原因は何なのかを聞いてみた。 夫は「いったいいくら家に入れていると思ってるんだ!」と怒鳴った。 定年後の家事分担についても「小使いのようにこき使って」と。 「自分はリビングで勉強することもできないのか!」「今住んでいるマンションもお前が住みたいと言ったから嫌々住んでいたんだ」「通勤に時間がかかることが気に入らなかった」と。
私だって、働いてもらったお金は大事に使ったし、計画的に貯金もした。もちろん全部夫の名義だ。夫の財産はきちんと貯めている。 退職後だって、年金をもらうまでは私に働かせて、自分が家のことをすると言ったから、私はフルタイムで働きに出た。 夫は洗濯と掃除はしてくれたが、食事は作らなかった。休みの日は私が家事をした。
土日の家事をする間だけでもリビングで勉強をしてほしくなくて、私の意見として口にしただけなのに。「出て行け」なんて言っていないのに。 夫は土日は私が起きる前に家を出て行き、夜遅くまで帰ってこない。平日も昼間は家で勉強しているのに、私が仕事から帰る前に家を出て22時ごろまで帰らない。朝は私が会社に行くまで寝室から出てこない。完全に私を避けて生活しているのに。 それなのに「お前は別の部屋に引きこもっている」と、まるで私が避けているように言う。 確かに無視されるようになって恐ろしいから、自分の身を守るために別室で寝るようになったが、それは仕方のないことだ。 とにかく、自分の思い通りにいかなかったことは全部私のせいだと言わんばかりだ。
それでも私は喧嘩別れは避けたいと思い、「私は出て行けと言っていないし、これからも一緒にやっていきたいと思っている」と伝えた。 「帰ってくるよね? ずっとあっちにいるつもりなの?」と聞くと、答えは「出て行くなら別に住む場所を探す!」だった。 私はそれを聞いて、「一旦は戻ってくるんだな」と感じた。
翌朝も、私が出勤するまで寝室から出てこない夫の元へ行き、「行ってきます」と挨拶をした。夫は「行ってらっしゃい」と答えた。 私は「リビングは好きに使ってくれていいから。家事もしなくていい。気をつけて行ってきてね」と言った。
完敗だ。 私の意見は一切受け付けてもらえず、大きな声で怒りをぶちまけた夫の勝利。 「私が悪い」という結果に、夫は満足したのだろうか。 それでも「帰ってきてほしい」と私が願ったのだから、しょうがないのかな。
とにかく敗北だ。何のために1ヶ月、口をきかないという喧嘩を頑張って続けたんだろうか。 今回こそは「自分は悪くない」、このままでは自分の意見も聞いてもらえない力関係が出来上がってしまう、と思い耐えたのに。 思いがけない義母の介護という問題発生で、別居となった。
